フクザツ系
「今まで経験してきたこと、知っていることがそのまんまで、過去に戻れるとしたら戻りたいと思う?もし、戻れるとしたら、いつに戻りたいと思う?」という話、大抵の人はしたことがあると思います。実際、過去に戻れるとしたら、未来を知っているからという理由で、幸せな生活を送ることができるかどうか。乾くるみの『リピート』という本を読んで、ちょっと考えさせられました。
この作品、なかなかリアルだなあと思ったのが、今現在の経験や知識をそのままにタイムトラベルで過去に戻れたとして、「未来を知っている」というアドバンテージを最大限に活用できるのは、過去と同じ行動をとった時だけ、という点をきちんと指摘してストーリーが展開されていく点です。
過去に自分がとった行動と違う行動をタイムトラベル先の過去(ややこしくてスイマセン)でとった瞬間、大なり小なり周囲に何らかの影響を及ぼし始め、最早、そこは自分の知っている過去ではなくなってしまい、予測が付かなくなってしまう、つまり、未来を知っているというアドバンテージを失ってしまう、というわけです。
じゃあ、そうならないように過去と同じ行動をとっていればいいんでしょ、となるわけですが、これがなかなか難しい。
1年前に戻れたとして、1年前にとった自分の行動なんて、そもそも覚えていないのが普通でしょうし、タイムトラベル先の過去で、一挙手一投足、「この場面、前はどうしたんだっけ?」と思い出しながら生活するなんてストレスが溜まってしょうがないです。話の中でも主人公がそういう状態に陥り、人と話す時に少し考えてから答えるようになったことで「なんだか人が変わったね」と言われるようになるのですが、「変わった」と思われてしまった時点でマズイわけですね。
自分の周りでは知っている通りに出来事が起こる中、自分だけが先のことを知っているという状態を活かすためにどう行動するのか、それが周囲にどう影響を及ぼしていくのか。これって、現実世界でも同じことが言えるんじゃないかと。
今、自分が置かれている状況は、自分以外の人たちの行動が前提となっているわけで、逆に、自分の行動は、自分以外の人たちの行動に少なからず影響を与えているはず。僕が書いたこの文章を読むことで、もしかすると知りもしなかったこの『リピート』という本を買って読んでみようかな、と思う人がいるかもしれず、その人は、それをまた知り合いの人に薦めて、本が売れてベストセラーになって、筆者に印税がたんまり入って生活が変わって…みたいな。日ごろ、なるべく人様に迷惑をかけないように生きているつもりなのですが、どこでどんなふうに周りに影響を与えているか分かったもんじゃありません。
フクザツなこの世の中、謙虚に生きたいものです。
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